万事、塞翁が馬

人生の幸・不幸は予測しがたい。京都の酒造ベンチャー"FLFS"の「名目上の社長」こと姉崎亮太の平凡な日常の記録。

酒造免許はわりと簡単に取れるよ 1.特区編

うちの会社は民家を改装して作った「日本一小さい酒造ベンチャー」だ。希望者は見学ができる(好きなだけ試飲できる)。
よほどの物好きか、京都市内の人くらいしかこないだろうと思ってたら、遠方から来る人が結構いる。酒造免許を取って酒造ベンチャーを始めたい人がわざわざ来るんだ。
「調べてみたけど取れないとか難しいっていう話ばっかりで、とった人の話が聞きたくて」
というのが見学者の1/3くらいだ。

この間もそういう人が来て、免許関係のアレコレを説明した。何回も説明してきたのでだんだん説明に慣れてきた。

いくつか条件はあるけど、酒造免許は割りと簡単に取れる。

①日本酒(清酒)はとれない。②ヤクザ・前科モノは取れない。③税金のトラブルを抱えている

日本酒をどうしても作りたいなら海外(カナダなど)で起業するか、日本酒の酒蔵を丸ごと買収するかのどちらかしかない。
③はしょうがないとして②はちょっと人権問題じゃないの?と思う。
ただ役所の基準は最高裁で判決が出ない限り覆らないから受け入れるしかない。

この3つの条件に当てはまらない人なら、酒造免許を取れないわけではない。
なんせ免許といっても運転免許や弁護士免許と違ってペーパーテストはない。工場を確保して書類さえ(100枚くらい)そろえれば認可は下りる。

国内で酒造ベンチャーを作るには3つの方法がある。
特区の簡易免許を取る
②正規の酒造免許を取る
③酒造メーカに製造を委託(OEM生産)して、酒販免許(酒屋の免許)をとって販売する

特区は"どぶろく(濁酒)" "果実酒(ワインおよびシードル)" "リキュール(梅酒)"がある。
国税庁のHPより
https://www.nta.go.jp/shiraberu/senmonjoho/sake/qa/03a/08.htm

どぶろく特区は日本中にある。つまり清酒はとれないけど濁酒は取れる。
清酒と濁酒の違いは瓶詰めの前に「こす・こさない」だけだ。清酒は「米・米麹を原料としこしたもの」と決められているのでこすと清酒になる。
スーパーで売ってる濁り酒はラベルには清酒と書いてある。日本酒メーカは日本酒の免許しかないのでこさないと濁酒の密造になる。だからすごくあらいザルでカタチだけこして濁酒として販売している。
焼肉屋で人気のマッコリもこれで作れるんで起業するなら意外と穴場だと思うね。

酒税法上の果実酒は果物を発酵させたお酒だ。ワイン特区と呼ばれてるがリンゴでシードルを、やろうと思えばベリーワインも作れる(シェリー酒などの酒精強化ワインは作れない)。
山梨とか長野とか果物王国はたいていワイン特区になっている。

あとは和歌山にリキュール(梅酒)の特区がある。特産品として市が認定した果物を漬け込んで作るリキュールが製造できる。

特区なら免許は取れる。なんせ免許を緩和するのが特区からだ。
ただし特区の免許は正規免許と違い色々な制約がついている。特区内で民宿や飲食店をいとなんでいるものに限る」「工場は特区内にあること」「原料の米は自ら生産したものに限る」「特区内で生産された特産品の果物であること」などだ。

旅館を始めろとか農家になれとか確かに邪魔くさいがメリットはある。
免許が緩和されるのは間違いないメリットだ。民泊が盛り上がってるので民宿は意外と儲かる収益源になるかもしれない。農家が「自分たちで育てた米で作った」というのは売り文句になる。
なにより農業をやると補助金がでかい。

酒を作った場合と農家が酒を作った場合とでは補助金の管轄が変わる。農家が何かをすると農水省の6次産業化補助金の対象になる。

農水省農家向けの補助金は金額がでかく審査がゆるい300万から最大2000万までいくつも種類がある。当選確率は80%だ。よほどのことがない限り落ちない。

それに比べて酒造メーカは経産省の下の中小企業庁補助金になる。10万から500万当選確率は30%強だ。

起業の際に補助金が使えるかどうかは大きい。当たるかどうかわからない補助金は当てにならないが、当たるとわかってる農水省補助金ならそれを計画に組み込める
田舎は土地が安いので建物も広めにできるし、最近は飲食店を併設してる酒造ベンチャーも多い。飲食店の内装の費用は結構大きいが補助金が下りるなら、みすぼらしくないものが作れる。

お金持ちが趣味で始めるのなら別としても、個人がポケットマネーで始めるなら資金に余裕はないはずで、300万円の補助金が確実に取れるってのはかなり大きい。