万事、塞翁が馬

人生の幸・不幸は予測しがたい。最後に立っていたやつが勝ちさ。京都で酒造ベンチャーをやっているよ。

お行儀の悪いことをすると損するぜ

新潟の依頼人からクロモジで酒を作りたいという人を紹介された。
それが2か月くらい前で、渋谷のイベントの前でちょっと忙しかったのだが紹介である以上仕方がない。酒税法上のなんやらとか食品衛生法やPL法がどうこうとか、以前「木のリキュール」を作った時にどういう所に苦労したとかそういう話をした。林業をやっている人で独自のアイディア商品なんかを過去に作っているそうだ。
「イベントが終わるまでは手一杯なので10月からやりましょう」
という話だった。 その人はイベントにも来てくれてそこで名刺交換をした。東京から京都に帰ったら以下のメッセージが届いた。

おはようございます!先日はお忙しい時間にお声掛けしてしまいまして、申し訳ありませんでした。

クラフトジンにつきまして、色々と悩みましたところ、どうしても新潟県内で製造したい思いがあり、その後いろいろと掛け合ってみたところ、1つの酒蔵が協力していただけるとのことで、今回は新潟の酒蔵でクラフトジン を製造する決意をしました。

姉崎様には色々とご指導いただいたにも関わらず、本当に申し訳ございません。弊社もお酒業界に参入するにあたり、少しでもこの業界に貢献できるよう邁進してまいります。
ワガママな申し出ですが、姉崎様のお酒に対する思いにとても惹かれます。 今後ともお付き合いいただけましたら幸いです。 何卒よろしくお願いします。

OEMの案件がポシャることはよくある。
見積りを送ったが、サンプルを作ったが、見学に来たので相談を受けたが、「進捗をメールします」と言っていたが音信不通、などなど。 商売にしようというわけだから乗り越えるハードルは多く高い。計画の細部を詰めたうえで見切りをつけて諦めるのも一つの才覚だと思ってる。 とはいえ、
「よそに決めたから。じゃあね」
ってのはさすがに初めてだ。

連絡してきた分だけ律儀だ、と思うべきだろうか?でも散々質問してアドバイスを受けてから
「やっぱりよそに発注します」
というのは、まぁ、お行儀が悪いのは間違いない。資本主義社会では情報や信用も商品だからさ。新潟県内で作りたいというなら最初から県外の業者に話をする必要がないので、クライアント側の一方的な都合で仕事のキャンセルなんてしたらかかった経費とか請求されたりするし、特に今回は紹介を受けているわけで紹介先に対して行儀の悪いことをするのは紹介者のメンツをつぶすわけだし、凄いなーの一言である。

不可解なのは、彼はイベントの3日目くらいに来て挨拶をしたわけだが、その頃にはもう別の業者にあたりを付けていたはずだ。これから切り捨てる業者に挨拶に行く必要があったんだろうか?
まぁちょっと変わった人ではあるんだ。受け取った名刺には「活動家」と書いてあって赤軍派かなんかかと思った。

弊社もお酒業界に参入するにあたり、少しでもこの業界に貢献できるよう邁進

商品もまだ作ってないのにずいぶんと大仰だ。うちよりも安い見積もりを出すところあるわけない(時給換算すると最低賃金くらいになる。完全に酔狂で引き受けてる)し、クラフトジンもすでに国内だけで50くらいあって「ロンドン・ニューヨークでは流行ったが、日本人はジンは飲まないな」なんて話も出てるくらいで、そう簡単に利益が出るとは思えない。ずいぶんと風呂敷広げるなぁと思った。

ま、いっか。 今後関わることもないし、考えてもしょうがない。
せいぜい頑張ってね。