万事、塞翁が馬

人生の幸・不幸は予測しがたい。京都の酒造ベンチャー"FLFS"の「名目上の社長」こと姉崎亮太の平凡な日常の記録。

竹中平蔵の本を読んだよ

竹中平蔵氏の本を読んだよ。

 Twitterを見てて竹中平蔵の悪口がTLに何日か並んでた。「派遣を搾取してるのはパソナだ」とか。僕のTLで竹中平蔵を褒めてたり擁護してる人を見たことがない。その状況を見て「竹中平蔵について学ばないといけない」と思った。

竹中平蔵=悪”と思いこんだ人が会ったこともない竹中平蔵の悪口をTwitterに書く。それを同じ考えの人がこぞってRTして悪口が日常的に流れてくる。主観的に解釈された情報がふんだんに流れてくる。それは戦時中のプロパガンダと同じようなもので、意識的に情報を精査しないと自分の認識が歪ませる。それを避けたい。

”鬼畜米英”と政府が宣伝するからってアメリカやイギリスが鬼畜とは限らない。その判断は自分ですることだ。国内向けの宣伝と実態のギャップについてはW杯見てる人はわかるでしょ?「TVキャスターが言うほど日本の選手すごくないよね、視聴率のために盛り上げてるだけでしょ」って。

その人物について「善悪」「自身の利益になるならない」「歴史的意味合い」などを評価するには本人の書いている本を読むのが良い。たまたま目についたこれを選んだ。今後も何冊か読んだ上で評価するつもり。

好きか嫌いかを語る以前の問題として竹中の本はみんな読まないといけない、というのが僕の認識だ。新自由主義の時代は終わってファシズムの時代が始まった。上げ潮派理論武装はピケティに否定された。そういう意味で論客としての竹中平蔵の時代はもう終わった。だからきちんと整理しないといけない。良い点と悪い点を整理して次の時代に良い点を生かさないといけない。

以下、この本および著者についてのメモ。

竹中式イノベーション仕事術 「楽では生きられない日本」で戦う12の力

  1. 本の評価:割といい本
  2. 竹中氏の現代社会への認識:妥当
  3. 竹中氏について:ちょっと変な人
  4. 働き方について:モダン

1.割といい本
副題の通り仕事楽では生きられない日本・12の力の3つの要素でできてる。
古典力・イノベーション力とか12の要素に各章が当てられ解説と改善のためのアドバイスが載ってる。妥当な内容が端的にまとまってるので本としてよくできてる。大学の先生なので念頭に置いている読者は学生(慶応の)だろう。誰が読んでも「何も得るものがない」という事にはならない。半面、読みやすいいい本だけど名著ってほどでもない。1つ1つの説明が簡略化されてる分だけ深さはないから。

2.竹中氏の現代社会への認識
前提になってる楽では生きられない日本というのがこの本のキー。
・資本主義社会で競争を避けて生きることはできない。
・日米欧に中国やインドの新興大国が競争に加わる。競争の激化は避けられない。
・経済活動は人間によって行われているので「その人がどういう人間か」はどんな時代になっても大事。
・競争に敗れて下層階級に落ちていく人間と踏みとどまったり勝ち残る人間の2つに分かれていく。
・その人がどういう力をもっているのかがそのまま社会の階級になる。

この認識は妥当であろう。

3.竹中氏個人のについて
この人は分析が好き物事を分割するのが好き
前の勉強法の本ではマトリクスに分類した。この本では人間の力を12に分ける。12ってのは多い。物事を場合分けして考える場合、普通は3つか4つ、多くて7。ドラクエだって「ちから・たいりょく・すばやさ・かしこさ・うん」の5要素だ。12になったのは4つに分けた後、さらに3つに割ってるんだろう。2回もやってるあたり分割好きなんだろう。

ゲーム中に敵のプロパティを開いてパラメータ確認してどう戦う(HP低いなら叩く・固いなら魔法)か決めるように竹中氏は人の12のパラメータを確認して付き合う人間を決めてるのだろう。

4.働き方について
この竹中的世界観に「一つの会社に定年まで勤めるという生き方」「一度雇った社員は定年まで面倒を見るという会社」という世界観は共存しない。

会社は目的に合わせたメンバーで一時的に組まれたパーティに過ぎない。目的が達成されたらパーティは解散する。労働者は別のパーティを探す。必要とされれば見つかるし、見つからないなら落ちぶれる。それは自己責任。自分の腕を磨きましょ、という世界観だ。

マーケットメカニズムが世界観を前者から後者に変えていくのは必然。今後日本型経営の企業は没落する。人材の流動化が起こるので人材派遣業は特需。君たち(慶応の学生)はそんなのに構わず多国籍企業に行ってワールドワイドに活躍しろ、という基本方針だ。

大学を出る、就職、大学院、研究職、就職、博士号の取得、転職、といった流れで村人が戦士や魔法使い・上級職を経て勇者になるといったDQ6的なキャリア設計を読者や学生に勧めていて何より本人がそれを行ってる。それをするかしないかは自由で、しないなら落ちぶれる(パソナで働く)。

竹中氏は学者じゃなくて実務家で、そして博士号を持ってる。「局長以上に出世するなら当該分野の博士号が必要」というのは世界共通のルールで最近は中国ですら導入してる。「これからの時代は学士じゃ相手にされない、博士号が必須」と認識して銀行辞めて大学戻ることをこの世代で選択した人は少ないだろう。

竹中氏が成功した理由は日本で数少ない博士号を持ってる実務家だったからで、先見の明があったのは確か。
現代の(中流以上の)若者にとっては氏の生き方の方がモデルだろう。